2025/05/22
フェルミ推定とは何か?
☛一言で言えば、「ファクトがわからない数値を、論理的に推定する」こと。
よくある例は、「日本のマンホールの数を推定せよ」などですね。多くの戦略コンサルティングファームで出題されますが、短時間で多くの処理をこなす必要があるため、一定の練習をこなしておくことが必須。その後のケース面接を余裕を持って受けるためにも、フェルミ推定の実力を完成させておくことがコンサル就活の第一歩です。
フェルミ推定というと、世の中にさまざまな対策本等が出回っていることもあり、フェルミ推定に特化した対策が必要な「特殊技能」と思われがちです。
✅確かに、フェルミ推定ならではのTipsや計算のコツが存在することは事実。しかし、最も重要な評価指標は、フェルミ推定においても"考える力"に他なりません。
顧客セグメントごとのニーズの違いや市場規模の変動要因の洗い出しなど、フェルミ推定においてもケース面接と同様の「問いを立てる力」「仮説を持つ姿勢」が求められます。
この記事では実際の問題を取り上げながら、表面的なTipsに頼らず、レベルの高いフェルミ推定を行うための思考法をお伝えします。
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【就活対策】フェルミ推定で差がつく“覚えるべき数字”50選|面接での定番例題付き - CaseMatch(ケースマッチ)| 完全無料のAIケース面接対策
【フェルミ推定】例題&回答を徹底解説| 基礎知識から解き方のコツまで紹介 - CaseMatch(ケースマッチ)| 完全無料のAIケース面接対策
フェルミ推定のおすすめ対策本6選!基礎から就活対策まで完全ガイド - CaseMatch(ケースマッチ)| 完全無料のAIケース面接対策
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「プロジェクター」という、一般の消費者にそれほど馴染みがなく、かつ耐用年数の長い商材です。
📝ToB中心に利用シーンをいかにうまく整理するか、そして新規導入・買い替えのシーンをいかにうまく盛り込むかが問われています。
こうした論点は、売上向上等のケースのお題においても重要になる論点です。結果の数値よりも、こうした本質的な問いを念頭に置いて考えていきましょう。
まずは、大きな立式の大枠を考えましょう。ここでのポイントは、「粗い大枠をいったん作り、大枠を起点にドライバー分解していく」ことです。
ここではまず
年間売上=年間販売数*単価
という立式がベースとなります。ここから、
年間販売数=国内にあるプロジェクターの数/耐用年数
といった分解を行います。
✅ここでは、「なぜ他の立式よりこの立式が優れているのか」を説明できるように意識しましょう。
例えば、年間販売数は他の商材なら「人口/世帯あたりの購入割合を考える」等の方法も考えられますが、プロジェクターは会社や公共施設等にありそうなので、プロジェクターがどこにあるのかを丁寧に整理する必要がありそうです。
一定の立式ができれば、セグメント分け等の分析を行っていきます。
✅まず、「国内にあるプロジェクターの数」を考えましょう。
プロジェクターは会社や公共施設等、用途が限られていそうです。プロジェクターの用途を分類していく方針とします。なお、映画館の映写機も一種のプロジェクターと考えられますが、特殊な設計だと思われるため、ここではスコープから外します。
🔹To B
企業オフィス
学校
貸し会議室、イベント会場等
🔹To C
自宅での映画鑑賞等一部のコア層
それぞれについて、プロジェクターの数を推定しましょう。
「企業オフィスがいくつあるのか?」等、丁寧に考えるとそれぞれで1問のフェルミ推定のお題くらい手数がかかりそうです。ここでは、思考時間5分と想定し、限られた時間の中でいかに最善を尽くせるかを考えてみます。
国内の企業数が知識としてあればそれを利用しても良いですが、ここでは企業数を覚えていなかったと想定しましょう。
「ホワイトカラーの企業には大体会議室があり、プロジェクターが備えられていそう。従業員数100人あたり1つくらいプロジェクターがありそう。」と想定しましょう。だとすれば、
「人口*生産年齢人口割合*ホワイトカラー割合/100」
で企業オフィスにあるプロジェクター数が求められそう。
「1.2億人*50%*50%/100=30万台」となります。
次に、学校。小学校、中学校、高校、大学…と分類してもいいですが、大きな時間のロスになりそう。そこで、学生の人数全体を求めてから、学生の人数あたりのプロジェクターの数を求める方針で行きます。
1学年あたりの人口は、「1.2億人/80=150万人」。高校進学率は9割超、大学進学率は6割程度ですから、学生の数全体は「150万人*(6+3+3+4*0.6)=約2,000万人」とします。
次に、学生の人数あたりのプロジェクターの数を求めます。小学校〜高校は1クラス40名ほど。プロジェクターのない学校、プロジェクターではなくテレビ等を用いる学校、一部教室にプロジェクターがある学校、全教室にプロジェクターがある学校が想定されますが、近年は教育のデジタル化が進み利用率は比較的高いと想定。平均をとって2クラスあたり1つプロジェクターがあると想定します。
大学はクラスの規模は大きいですが、部屋数が余裕を持たれているイメージなので同じ比率(80名あたり1つ)とします。「2,000万人/80=25万台」です。
こちらはかなり想定が困難です。面積あたりの会議室の数や、会議室の需要推定から求めるのがベーシックでしょうが、かなり時間もかかり誤差も大きそう。こうした困難なお題では、比較対象を設定して概算するのがベターなことが多いです。
ここでは、一定の面積あたりの企業オフィスと貸し会議室・イベント会場の比率を考え、企業オフィスの1/10と想定します。粗々であることは許容し、「30万台/10=3万台」。
世帯ごとに保有の有無が決まっていると想定し、「世帯数*プロジェクター保有率*保有数」で求めます。保有数の見当がつかないので、少し詳しく分析。
ほとんどが映画鑑賞だと想定し、「保有率=映画コア層率*プロジェクター選択率」とします。「5000万*(10%*1%)*1=5万台」。
耐用年数はテレビ等の家電からのアナロジーで10年とします。単価はテレビよりも一回り大きいと想定して10万円。ToB向けの単価の高い商材もあると考えられますが、ここでは多くがベーシックなものと想定します。
「30万台+25万台+3万台+5万台=約60万台」というように、細かな数字は四捨五入で丸めましょう。「約60万台/10年*10万円=60億円」となります。
📝ここに時間を使ってしまうともったいないため、計算は工夫してクイックに行いましょう。
最後に妥当性検証をしておきましょう。妥当性検証は、面接官から質疑応答で求められることもありますし、面接官から求められずとも自分の答えが大きく外れていないか確かめるクセをつけることは重要です。
👉フェルミ推定は結果の正確さよりも計算過程が問われていると言われますが、結果があまりにも妥当でない場合は計算過程に問題がある(重要なドライバーを逃している等)可能性が高いのです。
よく使われるのは、1.2億で割って人口あたりの数値に直すこと。ここでは「60億円/1.2億人=50円」ということで、一人あたりにすれば妥当そうな数値です。
また、知識として知っている数値との比較をすることも重要です。例えば、コンビニの1店舗あたりの年間売上は約2億円。「60億円/2億円=30店舗」で、コンビニ30店舗分の売上相当となります。やや小さい気がするものの大きな誤りではない、といった評価でしょうか。
フェルミ推定においてもまず重要なのは、ロジックをしっかりと詰めることです。何となくの仮定や経験ベースの想定を出来るだけ避け、思考のプロセスを説明できるようにしましょう。
🌟ここでのポイントは、「なぜその立式にしたのか?」にも考えを巡らせることです。
「なぜその数値になったのか?」はみなさんきちんと考えられますが、立式も複数の選択肢があるうち、ベストなものを選択しているはずです。複数の立式を比較し、それぞれのメリット・デメリットを比較して初めて、自分の回答がベストだと示せるのです。
フェルミ推定は立式をすれば終わりではありません。各ドライバーについて、顧客セグメントごとの消費傾向の違い、時間帯による客数の違いなど、分解して深掘りすることでより精緻になるのです。しかし、何でもかんでも分解すれば良いというものではありません。例えば例題では、「プロジェクターはどのような用途に用いられるか」を重点的に掘り下げました。
🌟このように、限られた時間で、いかに重要なドライバーを見極め集中して深掘りできるかが重要なポイントです。
たとえばこんな疑問を自分に投げかけてみましょう:
東京のカフェの数はどれくらい?
日本中で1日に食べられている卵の数は?
渋谷のスクランブル交差点を1日で通過する人数は?
➢ 完璧な答えよりも、「ざっくり分解して論理的に考えること」が大切。
スマホのメモに、分解→仮定→計算→答えの流れを簡単に書き出すだけでOKです。
フェルミ推定を実務的に使いこなすには、単なる数字の分解だけでなく、「誰が、どんな場面で、なぜ使うのか?」といった顧客行動や、「価格帯・頻度・購入動機」などの商材の特徴を意識することが重要です。
・任意の商材(例:タピオカ、サブスク、電動キックボードなど)をひとつ選ぶ
・その商品が「誰に・いつ・どこで・なぜ」使われるのかを整理
・それを数式に落とし込んで推定を作る(下記例参照)
・顧客行動の仮定:
→ 主に10~20代の女性がターゲット。放課後や休日に購入。
・商材の特徴の仮定:
→ 単価600円前後。トレンド消費でリピートもある。
・推定式の例:
→ 「該当年代の人口 × 購入率 × 週あたりの回数 ÷ 7日」
👀 このように「誰がどんな行動をとるか」を丁寧に分解する力は、面接やコンサルGDでも差がつくポイントです!
フェルミ推定は、特殊技能ではありません。ケース面接と同様、「問いを立てる力」「仮説を持つ姿勢」が求められます。その意味で、フェルミ推定はケース面接の基礎と言えるでしょう。だとすれば、フェルミ推定のトレーニングもケース面接と同様、アウトプットとフィードバックを繰り返し、PDCAサイクルを回すことが上達の近道です。しっかりと自分の頭で考え復習することを大切に、頑張っていきましょう。