
ケース面接
2026/11/03
技術設計面接(システムデザイン面接)のお題「toC向けWebメディア」を題材に、事前に押さえておく知識、面接で引き出せる前提、論点、模範解答、よくあるつまずきを順に解説します。
ほかのお題の解説は技術設計面接の解説と模範解答まとめにあります。
この記事で使う設計の基礎は、日本語のシステムデザイン面接の教材 SystemDesign InterviewCat で詳しく学べます。この記事の各節に関係する章は次のとおりです。
InterviewCat の章 | この記事で関係する節 |
|---|---|
SystemDesign InterviewCat の全体像 | |
面接で見られることと進め方 | |
5. 配信とキャッシュ | |
5. 配信とキャッシュ | |
5. 配信とキャッシュ、9. 会員限定記事 | |
4. 全体構成(生成キューとワーカー) | |
6. 承認の記録と生成キューへの投入を取りこぼさない | |
4. 全体構成、8. 障害への備え | |
8. 障害への備え(生成と CDN 削除の再試行) |
設計面接では、お題を聞いた時点で「たぶんこの作りだろう」という仮説を持ち、前提を聞くたびにそれを確かめたり崩したりします。Web メディアのお題なら、まず「記事の HTML をいつ、どこで作るか」の選択肢を押さえておきます。この選び方をレンダリング方式と呼びます。
読者が記事の URL を開くと、リクエストは次の順に奥へ進みます。手前で答えが返せれば、それより奥には届きません。

HTML を作れる場所とタイミングは、事前に(ビルドや公開のとき)、アクセスのたびにサーバーで、読者のブラウザで、の 3 つです。レンダリング方式は、この 3 つのどれを使うかの違いです。
同じ記事を読者が開いたとき、方式ごとに裏で起きることを並べます。
CSR(クライアントサイドレンダリング):ブラウザはまず中身のほとんど無い HTML と JavaScript を受け取ります。JavaScript が API から記事を取ってきて、ブラウザの中で画面を組み立てます。ログイン後の管理画面のように、操作の多い画面に向いています。記事のように読むだけのページでは、JavaScript の読み込みと API の応答を待つ分だけ表示が遅れ、API が止まると中身が空になります。X や LINE で共有したときのリンクカード(OGP)は多くの場合 HTML だけを読んで作られるので、カードが空になりやすい点も弱みです。
SSR(サーバーサイドレンダリング):アクセスのたびに、サーバーが DB や CMS から記事を読んで HTML を組み立てて返します。常に最新で、ログインした人ごとに中身を変えられるので、カートやマイページに向いています。CSR と比べると、データの取得がサーバー側で済むので内容が早く表示され、検索エンジンや SNS のリンクカードにも中身の入った HTML を渡せます。ただし、HTML を作り終えるまで応答が始まらないので、DB が遅いとその間は画面が白いままです。代わりに、5,000 人が開けば 5,000 回組み立てることになり、DB や CMS が止まると読めなくなります。
SSG(静的サイト生成):公開の前にまとめて全記事の HTML を作り(ビルド)、ファイルとして置いておきます。読者には作り置きのファイルを返すだけなので速く、CDN にも載せやすく、DB が止まっても読めます。弱いところは、作った時点の内容で固定されることです。全員に同じ HTML を返すので、ログインした人ごとに中身を変えられません。記事を直しても、ビルドし直してファイルを置き直し、CDN の写しが入れ替わるまで読者には届きません。この遅れは、全件ビルドにすると記事が増えるほど長くなります。
ISR(インクリメンタル静的再生成):SSG のように作り置きますが、ページごとに有効期限を決めておきます。期限が切れたあとに最初のアクセスが来ると、そのページだけを裏で作り直し、作り直している間は古いページを返します。全件ビルドを待たずにページごとに新しくなるので、SSG より新しい内容を出せます。それでも遅れは残ります。期限が 10 分なら、修正が読者に届くまで最大 10 分ほどかかります。さらに、期限が切れたあと最初に開いた読者には古いページが返り、新しいページが出るのはその次のアクセスからです。
オンデマンド再生成:ISR の一種で、期限を待たずに、記事を更新したときにこちらから「このページを作り直して」と指示します。修正はすぐ届き、指示がない間は写しを長く使えるので急増にも強くなります。その代わり、何が変わったらどのページを作り直すかを自分で管理する必要があります。Next.js では revalidatePath / revalidateTag にあたります。
エッジでの組み立て:ページを部品に分け、CDN の上で組み合わせて返します。たとえば本文は 1 日、金利の欄だけは 5 分、のように部品ごとに有効期限を変えられます。仕組みが複雑になり、使える CDN の製品も限られます。
方式名は Next.js などのフレームワークの機能名ですが、設計面接で比べたいのは名前ではなく、HTML をいつ作り、誰が作り直しのきっかけを作るかです。同じ考え方は、フレームワークを使わず自前の仕組みと CDN でも作れます。
方式の違いは、「記事を直したとき」と「大勢が同時に開いたとき」の 2 つの場面に、「人ごとに中身を変えられるか」を加えて比べると分かりやすくなります。
方式 | 記事を直したとき、読者に届くのは | 5,000 人が同時に開いたとき、裏側の仕事は | ログインした人ごとに中身を変えられるか |
|---|---|---|---|
CSR | 次に開いたとき | API が 5,000 回答える | できる |
SSR | 次に開いたとき | サーバーが 5,000 回 HTML を組み立てる | できる |
SSG | 全記事のビルドが終わったあと | ほぼ無い(CDN が写しを返す) | できない |
ISR | 有効期限が切れて作り直したあと | ほぼ無い。期限が切れた直後だけオリジンに届く | できない |
オンデマンド再生成 | 作り直しを指示した直後 | ほぼ無い | できない |
表から分かるとおり、すぐ届く方式(CSR、SSR)は大勢が開くと裏側の仕事が増え、裏側の仕事が少ない方式(SSG、ISR)は修正が届くまでに時間がかかります。この 2 つを両立できるのがオンデマンド再生成で、代わりに作り直しの管理が要ります。一方で、作り置く 3 つの方式(SSG、ISR、オンデマンド再生成)は、どれも全員に同じ写しを返すので、人ごとに中身を変えられません。今回のお題では、将来の会員限定記事を考えるときにこの点が問題になります。
お題文だけを読んだ段階では、次の仮説を置きがちです。どれも筋は悪くありませんが、前提を聞くと一部が崩れます。答え合わせは「隠れていた前提を見直す」で行います。
仮説 | 中身 | 確かめること |
|---|---|---|
1 | 読み物なので全員に同じ HTML を配れる。SSG か ISR で作って CDN に載せればよい | 反映の速さ、アクセスの山の大きさ、人ごとに違う中身が出るか |
2 | 公開のたびに全件ビルドしても間に合う | 記事数、公開から反映までの許容時間、全記事を一斉に変える場面があるか |
3 | 金利のような数字も、記事の本文として書けばよい | 数字の出どころ、更新の頻度、古い値が残ったときの重さ |
4 | CMS の公開機能をそのまま使えばよい | 審査の重さ、履歴の保存期間、CMS の選定条件、CMS が止まったときの扱い |
面接官から示されるお題は次のとおりです。
証券会社が運営する、20代向けにお金の情報を届けるWebメディアを作ることを考えています。記事を書いて法務の審査を通してから公開し、読者が記事を読んで口座開設ページへ移動できるようにしたいです。
▼このお題は CaseMatch の AI 面接で、面接官に前提を質問しながら練習できます。
前提は質問すれば答えてもらえます。面接で引き出せる前提を、レンダリング方式の選び方に関わるものとそれ以外に分けて並べます。種類の列は、機能要件、非機能要件、制約のどれにあたるかです。設計への影響の列は、次の節の問いを考えてから読んでください。
事前知識の比較表の 3 つの比べ方(直したときにいつ届くか、大勢が開いたときの裏側の仕事、人ごとに変えられるか)と、表示の速さ、裏側が止まったときに読めるかを決める前提です。
種類 | 前提 | 値 | 設計への影響 |
|---|---|---|---|
非機能 | アクセス | 通常 100 req/s、SNS で瞬間 50 倍(約 5,000 req/s) | オリジンで受ける前提にしない |
非機能 | 反映の速さ | 審査通過から 5 分以内に公開、誤りの修正はすぐ | キャッシュを長く持つこととぶつかる |
非機能 | 表示速度 | スマホで LCP 2.5 秒以内、読者の 8 割がスマホ | 表示後に数字を取りに行く作りとぶつかる |
非機能 | 数字の鮮度 | 金利と手数料は商品データ API から取れ、日次で更新。古い値が残ると問題 | 本文に直書きできない |
機能 | 注意文言 | 文言が変わると過去の記事にも反映が要る。5 年で 1 万記事 | 一斉に入れ替える仕組みが要る |
制約 | 編集ツール | 外部の CMS サービスはセキュリティ審査が要る。CMS 停止中も記事は読める | 配信を CMS から切り離す |
将来 | 会員限定 | いずれ口座を持つ人だけが読める会員限定記事を出したい | 公開ページと同じキャッシュでは配れない |
審査、権限、履歴、計測、体制のように、どの方式を選んでも別に設計が要る前提です。
種類 | 前提 | 値 | 設計への影響 |
|---|---|---|---|
機能 | 書き手 | 編集部 10 名と外部ライター約 30 名。外部ライターは自分の記事だけ編集できる | 記事単位の権限が要る |
機能 | 口座開設 | 別チームが運用する別ドメインの既存システム。遷移を記事単位で計測したい | Cookie を共有できない前提で計測する |
非機能 | 審査 | 未審査の文言が一瞬でも公開されると広告規制上の問題。法務 2 名、平均 2 営業日 | すぐ直したい修正とぶつかる |
非機能 | 履歴 | 公開した記事の修正履歴を 5 年保存 | 編集ツールの保存期間に任せられない |
制約 | 体制と期間 | 開発と運用はエンジニア 2 名、半年後に公開。最初は会員機能もコメント欄も作らない | 自前で運用するサーバーを減らす |
お題文は「記事を書いて、審査して、公開する」としか言っていません。前提の表は、質問して初めて出てきたものです。設計への影響を見る前に、あらためて前提を読み直し、お題文の裏に何が隠れていたかを考えます。先に次の問いを考えてから、前提の表の「設計への影響」の列と見比べてください。
前提の多くは単独では難しくありません。難しいのは 2 つが互いに逆を向いているところで、このお題では次の 3 組です。これがそのまま、面接の後半で詳しく問われる 3 つの論点(深掘り)になります。
ぶつかる前提 | なぜぶつかるか | 解き方 |
|---|---|---|
SNS で 50 倍 × 5 分以内の公開、修正はすぐ | 急増に耐えるにはキャッシュを長く持ちたい。すぐ反映するには短くしたい | 期限は長く持ち、変わったときだけこちらから消す |
未審査を一瞬も出さない × 誤りをすぐ直す(審査は平均 2 営業日) | 直した文言も未審査なので、すぐ出すと規制に触れる。審査を待つと誤りが 2 日残る | すぐできる操作を、新しい文言を足さないもの(非公開、前の承認版へ戻す)に限る |
金利は日次で変わる × LCP 2.5 秒、API が止まっても読める | 常に最新にするならブラウザから API を取りたいが、表示が遅れ、API が止まると数字が空になる | 数字は一か所で持って生成時に埋め込み、変わった記事だけ作り直す |
仮説 | 崩した前提 | 置き換え |
|---|---|---|
1. SSG か ISR で CDN | 5 分以内の反映、修正はすぐ | 「全員に同じ HTML を CDN で配る」は正しい。崩れるのは鮮度の決め方で、時間で切れる ISR ではなく、変更をきっかけに消すオンデマンド再生成にする。将来の会員限定記事では「全員に同じ」も崩れる |
2. 全件ビルド | 1 万記事、注意文言の一斉改定 | 全件ビルドはしない。記事単位で作り、影響する記事だけを作り直す。一斉改定のときに詰まるのは生成キューなので、優先度を分ける |
3. 数字も本文に書く | 日次更新、古い値は問題 | 本文には差し込み記号だけを置き、数字は別に持って生成時に埋め込む |
4. CMS の公開機能 | 未審査を一瞬も出さない、履歴 5 年、CMS の審査、停止中も読める | 公開してよいかの判定と履歴は自前の小さな公開サービスに持たせ、CMS は編集だけに使う |
このお題は記事を静的に配るだけのメディアに見えます。しかし実際に問われるのは、「審査を通っていない文言を一瞬も出さない」「古い金利を残さない」という金融ならではの正しさを、SNS での 50 倍の急増と両立させる設計です。
論点は 3 つあり、重さの順に配信とキャッシュ、編集と審査の流れ、変わる数字の分離です。どれも前提のうち 2 つが互いにぶつかっており、どちらをどう守るかを自分で決めて説明できるかが問われます。記事のデザインや SEO の細かい施策は評価の対象外です。
模範解答の深掘り(5〜7)では、論点ごとに「弱い答え」「よい答え」「より良い答え」を並べ、何が足りないかを示しています。
面接での問答の順には合わせず、このお題への答えを 1 つの設計としてまとめた解答例です。設計の筋は、読者のアクセスから DB と CMS を外し、審査を通った版だけから静的なページを作って CDN で配り、何かが変わったときは影響するページだけ作り直す、というものです。前提に無いことは仮定として置き、その旨を書いています。
前提を確かめたうえで、最初に作る範囲を次のように切ります。
編集ツールは外部のヘッドレス CMS を使います。何を公開してよいかの判定と修正履歴は CMS に持たせず、自前の小さな公開サービスに持たせます。
見積もりで出すのは、構成を決める 3 つの数字だけです。どれも前提の値から計算できます。
見積もり | 計算 | 決まること |
|---|---|---|
ピーク | 100 req/s × 50 倍 = 5,000 req/s | 自前のサーバーでは受けない。CDN は必須 |
オリジンに届く量 | キャッシュが当たる割合が 99% なら 50 req/s、90% なら 500 req/s | 割合を下げる原因(URL パラメータ、期限切れの集中)を先になくす |
全ページの作り直し | 1 万ページを作り直すと数分かかる | 公開と修正は、別の優先キューで先に処理する |
CDN からの削除は 1 秒もかからずに全拠点へ届くので(Cloudflare)、5 分以内の公開には間に合います。
版は書き換えず、記事の「公開中の版 ID」がどの承認済みの版を指すかで、読者に出すものを決めます。中心になる表は次の 4 つです。
表 | 主な項目 | 書き換え |
|---|---|---|
記事 | 記事 ID、担当ライター、公開中の版 ID(空なら非公開) | 公開中の版 ID だけを付け替える |
版 | 版 ID、記事 ID、本文(差し込み記号入り)、内容のハッシュ | しない |
承認 | 版 ID、承認者、日時 | 追記のみ |
参照表 | ページ ID、そのページが使う商品 ID と注意文言 ID | ページを生成するたびに作り直す |
公開、非公開、巻き戻しは、どれも公開中の版 ID を付け替えるだけです。非公開は空にし、巻き戻しは前の承認済みの版に戻します。どちらも新しい文言を出さないので、審査なしで実行できます。
読者が記事を開くときに通るのは CDN とオブジェクトストレージだけです。編集、審査、数字の更新はすべてその裏で非同期に動き、結果として静的な HTML を書き換えます。

色を付けた公開サービスがこの設計の要で、生成ワーカーはここで承認された版しか読めません。
版と承認の記録は RDB に、公開の操作ログは追記のみのストレージに保存します。キューとワーカーはマネージドのものを使い、2 名で常駐のサーバーを見る必要をなくします。
実例:英国政府の GOV.UK は、編集アプリと配信の間に公開を司る Publishing API を置き、配信用のストアを下書き用と公開用の 2 つに分けています(GDS, 2016)。The New York Times は公開済みの全記事を書き換えないログとして持ち、配信側はそのログから自分のストアを作り直せるので、CMS に毎回問い合わせません(NYT / Confluent, 2017)。
代わりの案:生成キューとワーカーを自前で持たず、Next.js のオンデマンド再生成(revalidateTag)をマネージドな基盤で動かす構成も同じくらい有力です。その場合も、ページのデータは公開サービスの承認版 API からだけ取り、revalidateTag は公開サービスから呼びます。承認版だけを出すことと、タグで差分だけ入れ替えることという設計の要点は変わりません。どちらにするかは、社内のセキュリティ審査と既存の CDN 契約で決めます。違いは、一斉改定のときに先に全ページを作っておくか(自前)、次のアクセスで作り直すか(Next.js)です。
記事ページは公開のときに記事単位で生成し、CDN では長めにキャッシュして、変わったときだけこちらから消します。最初の仮説の 1 と 2 は、ここで崩れます。CDN に載せる点は残し、鮮度の決め方だけを「時間」から「変更のきっかけ」に替えます。
答えの段階 | 答え | 足りないところ |
|---|---|---|
弱い答え | CDN を置いてキャッシュします | 記事を直したときに古いページが残る問題に答えていない |
よい答え | ISR で静的に作り、期限を短くして CDN に載せます | 期限が切れるたびに、取得がオリジンへ集中する |
より良い答え | 期限は長く持ち、変更のたびにタグで対象ページだけ消します | なし(中身は下の 6 つ) |
より良い答えの中身は次のとおりです。
この構成で最初に詰まるのはオリジンではなく、注意文言の改定のように 1 万ページをまとめて作り直すときの生成キューです(見積もりで数分)。並列数を絞って流し、その間に入った記事の公開や修正は別の優先キューで先に処理します。
実例:ページにタグを付けてまとめて消す方式は、Fastly が Surrogate Key として解説しています(Fastly, 2013)。Cloudflare はタグを指定した削除が世界中に届くまでを中央値 150ms 未満にしています(Cloudflare, 2024)。公開をきっかけにそのページだけ作り直す仕組みは Next.js が On-demand ISR として入れており、用途にヘッドレス CMS で記事を更新したときを挙げています(Next.js 12.1, 2022)。同じ URL への取得を 1 本にまとめる機能とその限界は Fastly, 2025、stale-while-revalidate と stale-if-error は Fastly, 2014 にあります。
公開できるのは、法務が承認した版そのものだけです。状態のフラグではなく、書き換えられない版と、その版を指す公開中の版 ID で守ります(3 のデータモデル)。
答えの段階 | 答え | 足りないところ |
|---|---|---|
弱い答え | 下書き、審査中、公開の状態を持たせます | 承認後に本文を書き換えると、その文言がそのまま公開される |
よい答え | 承認した版を固定し、その版だけを公開します | 誤りをすぐ直したいときの手がない |
より良い答え | 承認版だけを公開し、すぐできる操作は非公開と巻き戻しに限ります | なし(中身は下の流れ) |
この仕組みを破らせないために、生成ワーカーには承認済みの版を読む権限しか持たせず、CMS の下書きを直接読めないようにします。外部 CMS の公開ボタンを押しても、読者には何も届きません。
未審査の文言を出さない条件と、誤りをすぐ直す条件がぶつかるところは、すぐにできることを新しい文言を足さない操作(非公開、直前の承認版へ戻す)に限って解きます。どちらも審査を通った文言しか出さないので、編集部の責任者が審査なしで実行でき、数分で反映されます。そのうえで修正版は優先審査に回します。法務が 2 名しかいないので、修正だけは当日中に見るという取り決めを、仕組みとは別に法務と結んでおきます。金利の誤りは本文の修正ではなく、次の節の数字の差し替えで直ります。
実例:GOV.UK では、記事 1 件が持てるのは下書き 1 件、公開中または非公開 1 件、置き換わった過去の版だけです。公開した版は書き換えず、変更は新しい下書きとして作ります。取り下げにも、注記つきで残す、転送する、410 を返すなどの種類があり、誰がいつ何をしたかをログに残します(GOV.UK Publishing API)。プレビューは公開用と別に下書き用の配信一式を立て、認証と期限つきの共有 URL で見る人を絞っています(GOV.UK Content Preview)。
金利と手数料は本文に書かず、数字の表に一か所で持ち、ページの生成時に埋め込みます。
答えの段階 | 答え | 足りないところ |
|---|---|---|
弱い答え | 本文に書き、変わったら手で直します | どの記事に古い値が残っているか分からない |
よい答え | 数字を別に持ち、毎日全ページを作り直します | 毎日 1 万ページを作り直し、その間の公開が遅れる |
より良い答え | 変わった数字を使うページだけを、参照表から選んで作り直します | なし(中身は下の 4 つ) |
数字の値そのものは商品データ API の公式の値なので、記事ごとの審査の対象にはしないと仮定します。審査するのは、数字を囲む文言と表示の形式です。この仮定は法務と合意が要るので、面接では確認したい点として口に出します。
読者のブラウザから数字を取りに行く方式は採りません。表示のあとに数字が入るので LCP とレイアウトのずれに響き、API が止まると数字が空になります。急増の 5,000 req/s が社内の商品データ API にそのまま届くことにもなります。
注意文言も同じ仕組みで扱います。文言は ID で参照し、改定は文言の新しい版を法務が 1 回承認するだけです。承認されたら、参照表からその文言を使う過去記事をすべて生成キューに流します。
実例:GOV.UK は以前、リンク先の内容をアクセスのたびに展開していましたが、遅く規模も伸ばせなかったため、公開時に展開して依存関係を DB に持つ方式に変えました(GDS, 2016)。今は、あるページが変わるとそれを参照するページを逆にたどって配信用のストアへ送り直しています(GOV.UK Dependency resolution)。この節の参照表と同じ考え方です。複数のタグを 1 回で消せるので、注意文言の改定のような一括の入れ替えも CDN 側は少ない回数で済みます(Fastly, 2017)。
数字の部分だけをページの断片にし、エッジで組み立てて断片ごとに期限を変える方式もあります(Fastly, 2022)。数字を載せるページが増えて作り直しが重くなったときの次の手として挙げられると、弱いところとその手当てまで言えます。
どこが止まっても、読者には最後に作ったページが見え続けます。例外は古い金利で、古い値を出し続けるより隠すほうを選びます。
止まるもの | 読者に見えること | 手当て |
|---|---|---|
CMS | 変わらない | 編集と公開だけが止まる。非公開と巻き戻しは公開サービスから直接できるようにしておく |
生成キューとワーカー | 修正前のページが残る | 再試行し、決めた回数で失敗したら通知する。生成は版 ID と数字の取得日で結果が決まるので、2 回実行されても結果は同じ |
商品データ API | 前日の金利が取得日つきで出る | 取得日が決めた日数より古くなったら、数字を隠して公式ページへのリンクに切り替える |
商品データ API の異常な値 | 前日の値のまま | 前日から大きく外れた値は反映を止め、人が確かめてから流す |
CDN | 古いページが出る。全面障害なら読めない | オリジンの障害時は古いページを返す設定(stale-if-error)。複数の CDN は 2 名では運用しきれないので持たない |
監視するのは、CDN のエラー率とキャッシュが当たった割合、生成キューの滞留、数字の取得日の古さです。加えて、公開中のページが承認した版から作られたものかを定期的に突き合わせます。
面接の後半では、運用で起きた不具合や将来の要望という形で条件が足されます。答え方は、今の設計でなぜ起きたか、何をきっかけに何をどう処理して直すか、変えずに済むところはどこか、の順です。
例 1:金利を直したのに、一部の読者に古い金利が出ていた
例 2:口座を持つ人だけが読める会員限定記事を出したい
実例:ドイツの Die Zeit は、無料か有料かと購読者かどうかをエッジで判定し、本文全体か購読の案内かを出し分けながら、キャッシュが当たる割合を 9 割超に保っています(Fastly の導入事例)。会員限定を共有キャッシュに載せない今回の案より一歩進んだ形で、アクセスが増えたときの選択肢になります。
判断 | 選んだ案 | 捨てた案、代わりの案 | 理由 |
|---|---|---|---|
配信 | 記事単位の生成、CDN に長めにキャッシュ、タグで削除 | SSR、時間で再生成する ISR | 50 倍の急増とすぐの反映を両方満たす |
生成の仕組み | 自前の生成キューとワーカー | 代わりの案:Next.js の | 要点は同じ。一斉改定の前に全ページを作っておけるので自前を選んだ。セキュリティ審査と CDN 契約次第で入れ替えてよい |
公開の判定 | 自前の公開サービスが承認した版を固定 | CMS の公開フラグ | 承認後の編集を出さず、履歴を 5 年自分で持てる |
誤りの即時対応 | 非公開と前の版への巻き戻し | 審査なしの緊急修正 | 未審査の文言を出さない |
数字 | 生成時に埋め込み、参照表で差分だけ作り直す | 本文に直書き、ブラウザから取得、毎日全件作り直し | 古い値を残さず、LCP と API を守り、公開を遅らせない |
編集ツール | 外部のヘッドレス CMS | 自作 | 2 名で半年では配信と審査に手が回らない |
冗長化 | CDN 1 社と stale-if-error | 複数の CDN | 2 名では運用しきれない |
つまずき | なぜ弱いか | 抜け出す一手 |
|---|---|---|
面接の最初から構成図を話し始める | 50 倍の急増や広告規制など、設計を決める条件を取りこぼす | 急増、反映の速さ、未審査の重さを先に聞く |
見積もりをせずに CDN が要ると言う | なぜ要るのか、オリジンに何が残るのかを数字で言えない | 帯域とオリジンに届く量を 1 行ずつ計算する |
CDN を置くと言って終わる | 記事を直したときに古いページが残る問題に答えていない | 公開と修正をきっかけに、どのページをどう入れ替えるかまで言う |
下書き、審査中、公開の状態を並べて終わる | 承認後に書き換えた文言がそのまま公開される | 承認を版に紐づけ、公開できるのはその版だけと言う |
誤りはすぐ直す、とだけ言う | 直した文言も未審査で、審査には 2 営業日かかる | すぐできるのは非公開と巻き戻しだけと切り分ける |
金利をブラウザから API で取る | LCP、API 停止時の表示、社内 API への負荷を説明できない | 生成時に埋め込み、変わった記事だけ作り直す |
CMS を使えば解決する、と言う | 外部 CMS にはセキュリティ審査があり、止まったときも読める必要がある | CMS は編集だけに使い、配信と公開の判定を切り離す |
設計を全部自前で作る | エンジニア 2 名と半年という前提に合わない | 作るのは公開の判定と生成だけにし、残りはマネージドに任せる |
▼解説を読んだら、同じお題を AI 面接官を相手に通しで解いてみましょう。
海外の技術ブログと技術文書です。どれも開いて内容を確かめています。CDN 事業者の記事は自社製品の紹介を兼ねており、GOV.UK は企業ではなく英国政府の開発チームです。
節 | 記事 | 参照した内容 |
|---|---|---|
2 | Instant Purge(Cloudflare, 2024) | タグ指定の削除が中央値 150ms 未満で世界中に届く |
4 | Introducing the GOV.UK publishing platform in detail(GDS, 2016) | 編集と配信の分離、下書き用と公開用の 2 つのストア |
4 | Publishing with Apache Kafka at The New York Times(NYT, 2017) | 公開済み記事を書き換えないログで持ち、配信側が自分でストアを作る |
5 | Surrogate Keys: Part 1(Fastly, 2013) | ページにタグを付け、タグ単位でまとめて消す |
4, 5 | Next.js 12.1(Vercel, 2022) | On-demand ISR。現行の revalidatePath / revalidateTag の前身 |
5 | Request Collapsing Demystified(Fastly, 2025) | 同じ URL への取得を 1 本にまとめる機能とその限界 |
5, 8 | stale-while-revalidate, stale-if-error available today(Fastly, 2014) | 期限切れや障害のときに古いページを返す設定 |
6 | 公開した版を書き換えない版のモデル、取り下げの種類、操作ログ | |
6 | How the draft stack works(GOV.UK) | 下書き専用の配信一式と認証つきのプレビュー |
7 | アクセス時の展開から公開時の展開と依存関係の表へ変えた経緯 | |
7 | Dependency resolution(GOV.UK) | 参照しているページを逆にたどって作り直す |
7 | Introducing batch API for surrogate key purge(Fastly, 2017) | 複数のタグを 1 回で消す |
7 | ESI and the story of libraries built for the edge(Fastly, 2022) | ページを断片に分け、断片ごとに期限を変える |
9 | Die Zeit(Fastly の導入事例) | 有料記事の出し分けをエッジで行い、キャッシュが当たる割合 9 割超 |
▼ほかのお題の解説
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